先進的なまちづくりを通じて持続可能な社会をめざす
「三菱地所」のサステナビリティ経営
三菱地所株式会社 サステナビリティ推進部長 吾田 鉄司
三菱地所株式会社
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2030年度

CO2等の温室効果ガス排出量Scope1+Scope2

70%削減(2019年度比)
2030年度

CO2等の温室効果ガス排出量Scope3

50%削減(2019年度比)
2050年度

CO2等の温室効果ガス排出量ネットゼロ達成

(Scope1,2,3いずれも90%以上削減。残余排出量は中和化)
2025年度

再生可能エネルギー由来の電力比率

100%
2030年度

廃棄物再利用率

90%
2030年度

㎡あたりの廃棄物排出量

20%削減(2019年度比)
2030年度

女性管理職比率

20%超
2040年度

女性管理職比率

30%
2050年度

女性管理職比率

40%
2030年度

型枠コンクリートパネルの持続可能性に配慮した調達基準にある木材(認証材並びに国産材)使用率

100%

インタビュー(公開日:2023年12月21日)

長期経営計画2030における社会価値向上戦略

2020年1月に貴社が発表された「長期経営計画2030」では、「株主価値向上」と「社会価値向上」を両輪に据えた経営目標を掲げられ、事業活動を通して社会課題に取り組まれることを明確にされています。「株主価値」と「社会価値」を経営の両輪に据えていこうと考えられた背景や思いなどについて教えてください。
三菱地所グループでは従前、3年スパンで中期経営計画を発表していましたが、より長期的視野からステークホルダーに対して価値を提供していくという考えから、2020年に初めて10年にわたる長期の経営計画を発表しました。当社グループの事業は長い期間をかけて行うビジネスモデルが中心で、時には100年先の街の姿を見据えたスコープも必要となってきます。当社グループの基盤となる丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)において現在進行する「TOKYO TORCH」の完成予定も2027年度であり、経営計画も10年スパンの長期戦略が欠かせないと、判断しました。
経営計画が長期になるほど、サステナビリティの重要性は増してきます。従来は株主価値に焦点を絞った計画を立てていましたが、そこに社会価値を加えて経営の両輪に据えていくことを考えた時に、10年という長期軸の計画とサスナビリティは親和性が高いと思いました。
長期経営計画では、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」を両輪に据えた経営目標を掲げ、サステナブルな社会の実現に向け、事業活動を通じて時代が抱える社会課題の解決に取り組んでいくことを明確にしています。そのスタートは2018年、グループ横断のワーキングを組成し、当社グループを取り巻く環境変化を見据えて7つのマテリアリティを特定したことに始まります。これを元に特に当社グループが注力するべき社会課題として4つの重要テーマを定めたものが「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030」であり、「社会価値向上戦略」の柱として、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいくことを明確にしています。
2030年に向けて、財務的な目標と同様に、サステナビリティに関しても目標を定めて表裏一体の形で進めていこうとなったわけです。
社会課題の解決に取り組むのは時間がかかることです。経営計画の時間軸をロングスパンに捉え直して社会・環境課題に取り組みやすい目標設定にされたのは大きなポイントですね。
グループ全体として2030年に向けて「株主価値向上」と「社会価値向上」の2つを両輪にしていく姿勢を示したことは大きいですね。これを受けて、グループ内で(サステナビリティを)浸透させたり、コミュニケーションをとる動きも取りやすくなりました。
メッセージの発し方や内容は、社員の方への意識付けや行動動機への影響が大きいと思います。「長期経営計画2030」のメッセージは想定通りに機能されていますか?
サステナビリティに関しては、複雑かつ専門的な内容を含むようになり、課題も多岐にわたります。4つの重要テーマを含めて、世界の流れを把握し、しっかりと対応していくことが重要です。社内への啓発やステークホルダーなどに対する対外的な説明も適宜、過不足なく行っているつもりですが、特に当社グループ内の理解をさらに深めて、各社員が担当する業務との親和性を高めていかなければならないと感じています。社長も「サステナビリティ分野は、経営トップが自ら高い目標を掲げ、発信していかないことには進まない分野だ」と語っていますが、経営トップがしっかり情報発信して、役員、部長レベルも旗を振っていくことに加え、現場レベルでも研修等によって知識を充実させつつ、日々の業務でもサステナビリティに関する意識を強く持って行動することが必要だと思います。多角的なアプローチを継続して実行していくことで、2030年に向けた目標達成を目指したいと考えています。
また2020年度より、事業・機能グループごとに作成する年次計画に事業面の目標設定と並行して4つの重要テーマに関する目標やアクションプランも盛り込む運用としたことも社員の意識付けのきっかけになったと思います。
なお、サステナビリティ委員会において、4つの重要テーマのKPIの進捗について報告、新規目標設定や見直しについて審議を行っており、あわせて、サステナビリティ委員会の内容は、取締役会で報告する体制となっています。年次計画における目標の達成状況は、役員報酬に関する定性評価項目の一つとして位置づけられています。
なるほど。年次計画にサステナビリティの要素を入れ込もうという考えは株主さんからの提案なのでしょうか?
サステナビリティは経営計画の両輪の一つなので、年次計画にその要素を入れるのは当たり前という社内判断で組み込むことになりました。

重要テーマEnvironment:まちづくりを通じた気候変動・環境課題への取り組み

昨今、世界中で脱炭素化や気候変動対策が喫緊の課題とされていますが、総合デベロッパーである貴社がまちづくりを通してどう気候変動や環境課題に取り組まれているのか、具体的に教えていただけますか?
脱炭素社会に向けては、2019年3月に掲げた目標を見直し、2022年3月に制定したグループのCO2排出量削減目標とネットゼロ宣言により、日本企業として初めて、同年6月にSBTイニシアティブ より「ネットゼロ新基準(The Net-Zero Standard)」に沿ったSBT認定を取得しました。スコープ2の削減を目指して、2021年度より再エネ電力の導入を積極的に進め、RE100の2025年度達成を目指します。2022年度は東京都内・横浜市内で当社が保有・運営する全ての物件※1の使用電力100%を再エネ由来に切替え、仙台市や名古屋市、広島市など支店拠点における物件等でも同様の取り組みを広げることで、当社グループ全体の再エネ電力比率は約50%に達します。
さらに、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の強化にも努め、TCFDやSASB等のフレームワークに基づく適切な情報開示も積極的に進めており、TCFDについては、本年5月にCRREM※2を活用したリスク分析も踏まえた新たなシナリオ分析を開示しています。世界の動向を注視しながら、自社グループの枠を超えた地球規模の課題に向き合う重要性を認識したうえで、持続的成長に向けて当社が取り組むべき事項を検討し、実施してまいります。
※1 回転型事業及び再開発予定等の物件を除く、当社持分 50%以上のビル・商業施設。 当社持分 50%未満のビル・商業施設についても共同事業者等と協議の上、一部物件にて再エネ電力を導入。
※2 Carbon Risk Real Estate Monitor の略称。欧州の研究機関等が開発した商業用不動産の移行リスクを評 価・分析するツール。パリ協定が求める 2℃、1.5℃目標に整合する 2050 年までの温室効果ガス排出量のパスウェイ (炭素削減の経路)と自社ポートフォリオの脱炭素経路を比較することで、物件の座礁資産化の時期や座礁割合、または将来の排出にかかるコスト等を算定し、対応策やその効果を検討することができる。
目標設定にあたってベンチマークにされたものはありますか。
先に述べた通り、CO2排出量削減はSBTイニシアティブ、再エネはRE100など、国際的な指標に基づいて目標を設定しています。
同業他社との比較分析はされていますか?
他社の動きは当然ウォッチしていますし、必要に応じて情報交換も行っています。ただ、事業スタイルも異なりますし、やり方もそれぞれなので、他社比較を踏まえた方針策定を行うということはなく、あくまで当社として担うべき役割や責任を果たしていくという考えです。
環境の取り組みに関して苦労された点はありますか?
脱炭素社会へのアプローチにおいて重要な課題はスコープ3に関わるCO2排出量削減の取り組みです。当社グループのスコープ3は建築工事や物件を購入されたお客様が排出するCO2なども算出する必要があります。建築工事に関しては現在、不動産業界が一体となってCO2排出量算定方法の見直しを行い、資材ごとの排出量係数を使用することで、低炭素資材の活用等の努力を自社のCO2排出量削減量に反映できる仕組み作りに取り組んでいます。今後、我々デベロッパーが、低炭素に繋がる鉄やコンクリートを評価して採用する動きが、活性化してくるだろうと考えていますが、それらは一般資材と比して高単価になるため、メーカーが低炭素資材を生産しやすくするための政策や、デベロッパーが、そのような資材を採用しやすくする政策の導入にも期待しています。
他の企業様もやはりスコープ3には難しさを感じているところが多いようです。スコープ3はサプライチェーンを把握するところからはじめるので、まだ把握できてないという事業会社の声も聞きます。サプライチェーンマネジメントに関して貴社はいかがでしょうか?
最もサプライチェーンマネジメントを進めやすいのは、サプライチェーンの頂点に立つようなメーカーでしょうか。逆に難しいのは金融機関などでしょう。サプライチェーンの幅が広すぎて、どこから手つけていけばいいのかという話を聞きます。
当社はその間ぐらいではないかと思います。建築工事ではゼネコンだけではなく、設備機器メーカーなど非常に多くのサプライヤーの方々が関係してきますし、一直線型のサプライチェーンではありません。そういった点でサプライチェーンマネジメントの難しさを感じながら、如何なる対応が可能か、日々検討を重ねています。

重要テーマResilience:創業当初から続く震災・防災対策

気候変動の影響もあり、日本だけなく世界中で森林火災や洪水などの自然災害が多発する状況のなか、防災対策の重要性が高まっています。総合デベロッパーとしてどのように自然災害に対応し、地域社会へ貢献されていこうとしているのか教えていただけますか?
4つの重要テーマの一つに「Resilience~安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり~」を掲げています。当社前身の三菱合資会社地所部が1923年の関東大震災時、同年竣工の旧丸ビルを中心に救護活動を行ったことを契機として、以後100年にわたり震災対策、防災対策に注力してきました。基本使命の中で「まちづくりを通じて、真に価値ある社会の実現」を掲げる当社グループにとって、まちの機能維持・向上やインフラの整備は重要な使命です。リスクとして主に想定しているのは地震や火災ですが、気候変動による暴風雨、洪水への対策・対応も同じ視点で対策を進めています。
自分たちの資産を自分たちで守る意識が根底にあるので、常日頃から自然災害の対策をするのは当然です。それと同時にいかにビルやマンション等の入居者の方々のみならず、来街者や地域の方々の安心・安全を確保するのかというのは、当社グループが100年にわたり取り組んでいる重要なテーマです。

重要テーマDiversity & Inclusion:人や組織のあるべき姿

新型コロナウイルス感染症拡大によって「人財・働き方・価値観の多様化」が進んだこともあり、人的資本経営への注目度はますます高まっています。貴社として人材価値の向上や人的資本の拡充の観点でどんなことを重視されているのか、どのような施策に取り組んでいるのかなどお聞かせいただけますか?
当社グループは、長期経営計画を実現し、社会に対し価値を提供するうえで、人財※3が重要な財産であると考えています。その人財に求められるのは、「Change Maker」と「Professional」の2つの役割を発揮できることです。「Change Maker」とは、超長期視点 と時代を先取りするDNAを活かしつつ、変化を恐れず慣例にとらわれないチャレンジ精神を 持って行動し、外部の人たちから協力を得て、周囲を巻き込みながら事業を組み立てる力です。 「Professional」とは、その言葉通り、高い専門性を持ち合わせることです。異なる特性を持った社員ひとり一人が、固定観念をなくして2つの役割を発揮することで、1つのチームとして組織を作ることで、さらなる強みを発揮していこうというのが当社の人的資本に対する考え方です。
また、人財の多様性も重要です。これも社長の言葉ですが、多様性を失った 組織はやがては衰退してしまうかもしれません。組織や人財の多様性を高めていくためには、前提 として、制度やルールの整備はもちろんのこと、根本的には相手の立場を理解するということが重要であると考えています。
※3 三菱地所グループでは、社員は企業にとっての重要な経営資源であるとの認識のもと、「人材」ではなく「人財」と捉えています。
貴社の人的資本経営に関する評価軸やKPIについてお聞かせください。
女性管理職比率、新卒・中途採用における女性社員比率、男性の育児休暇取得率などをKPIに定め、その達成に向けた施策を取り進めています。

多様な価値観の人々が持続的に共生関係を構築できる場と仕組みをプロデュースする企業を目指して

人々の暮らしや働き方が変化し、多様な価値観や背景を持つ方々に対応していくことが求められています。まちづくりのおいて業界をリードする貴社として、どんな姿を目指されていますか?
当社グループのまちづくりの原点である丸の内エリアでは、多様な仕掛けをすることで、多様な人が集まる街にしていく。私たちが新たな価値を生み出すことで、街の価値も上がり、来てくれる方にとっての価値も上がる、そんな姿を目指しています。
また、まちづくりとは個人や単一企業だけではできないことや解決できない課題を社会全体として実現していくことです。そのためには、多様なパートナーとの信頼関係の構築が欠かせません。
当社グループは、長期経営計画とあわせて、2050年のありたい姿として「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050~Be the Ecosystem Engineers」を制定し、「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030」は、その実現に向けた具体的なテーマとアクションを定めたマイルストーンと位置付けています。当社はこのスローガンを通じ、企業や個人など立場の異なるあらゆる主体に対して、経済・環境・社会すべての面において持続的に共生関係を構築できる場と仕組み(エコシステム)を提供する企業(エンジニアズ)であることを目指すことをコミットしています。

ESG情報開示は基礎部分、直接的なコミュニケーションがより重要に

ESG情報の開示についてどのような方針をお持ちでしょうか?工夫されていることや課題があればお聞かせください。
ESG情報開示は適切なタイミングで、なるべく広範に実施する方針です。ESG評価機関の質疑対応はDJSI、GRESB、CDP(気候変動、フォレスト、水セキュリティ)などに対して行っています。求められる情報が毎年変わりますので対応はなかなか大変ですね。
それらの回答は、基本的には開示情報をもとに行いますが、CO2排出量の算出に要するデータや、その他必要な情報を各関係部署・グループ会社から収集する必要があります。
ESG評価機関やESGインデックスの外部評価については当社社長を委員長とするサステナビリティ委員会において結果を報告しています。あわせて、課題点やさらに高い評価を得るためにすべきことなども共有します。
当社はできる取り組みはどんどん進めて、情報開示もしっかり行っていくスタンスですが、スコア取得自体が目的ではないため、スコア改善のためだけに施策の追加変更を行う考えはありませんが、開示の仕方の変更や工夫で改善できる部分は対応していきたいと思います。
今後ますます国際的な情報開示ルールが厳しくなってきますので、継続してしっかり対応していく必要があります。
貴社の取り組みや「想い」を幅広いステークホルダーへ適切に伝えることも重要かと存じます。例えば、投資家に対して貴社のESGの取り組みが企業価値の向上にどう繋がるのかといったストーリーはどのように伝えていますか?コミュニケーションで意識されていることはありますか?
当社は、株主・投資家に長期的な経営の方向性についてご理解いただくため、株主とはESGを中心とした面談を実施しています※4。対話を通じて頂いたご意見・ご要望・ご提案等は、取締役会を通じて経営層にフィードバックし、対話を経営のPDCAに組み込むことで、持続的な成長を目指しています。
面談の中で課題の共有や株主にお伝えしたいことをダイレクトに伝えられるので、非常に有益な場です。例えば「ESG評価のどこを重要視していますか」などの質問もできますし、当社の中で遅れていると認識されている取り組みについては、直接その進捗を伝えることもできます。
情報開示の仕方はもちろん大事ですが、やはり直接コミュニケーションを取ることはお互いにとって重要だと考えています。
※4 株主とのコミュニケーション(ESG面談)については以下をご参照ください
多様な投資家のフィロソフィーがあるなか、適切なESG情報開示と丁寧なコミュニケーションをされている貴社のお話はとても勉強になります。貴社は「MSCI日本株女性活躍指数」に6年連続に選定されている他、気候変動関連の指数にも選定されていて、機関投資家からESGの取り組みが高く評価されていらっしゃいます。評価を得るまでにはご苦労もあったと思います。
最近では、長期経営計画で「株主価値」と「社会価値」を戦略の両輪と掲げているものの、社会価値の取り組みがどう株主価値(財務面)に反映しているのかという部分はまだ上手く見せられてないという課題感があります。
ただ、当社が取り組んできたことは投資家にも十分ご理解いただいています。例えば、今年からインキュベーション施設の施設面積や入居企業数の開示を始めたのですが、そうした情報を企業価値に繋がるストーリーとして仕立てて、定量的でなくても語っていくことが大事ではないかというご示唆をいただきました。
もう一つ課題を感じていることは、投資に対するリターンが見えづらいという点です。当社では新規不動産開発案件の投信判断において、サステナビリティに係る先進的な取り組みを行うことに対して、インセンティブを付与する制度を2022年度より開始しています。しかし環境性能の高いアセットが出口を迎えた時に、投資家にどれだけプラスとして迎え入れていただけるのかというところは、明確に定量化できていません。
例えば、テナントが入居する際の選択肢として再生可能エネルギーが選択できるというのは入口のわかりやすい話ですが、アセットの出口価値を上げていく仕組みがもう少し世の中で回るようになるとデベロッパーとしても動きやすくなります。これは今悩んでいるテーマですね。
これからはできる限り定量的に示しつつ、株主価値と社会価値をつなぐストーリーを作って未来の価値を表現していくことが課題かつ重要なポイントだと考えています。
最後に、記事をご覧になられている方への一言、今後の取り組みへの意気込み等をお願いします。
ESG評価機関やイニシアチブへの対応はベースとして大事なことですが、私たちはそれをクリアしたうえで、その先に何をするのかを常に考えています。
ESG経営が高いレベルに上がれば上がるほど、評価にこだわりすぎる必要もなくなっていくのではないでしょうか。
基本的な取り組みをしっかり押さえつつ、今後はいかに個性を打ち出して、私たちなりの良いところを積極的にPRしていくことを大切にしていきたいと考えています。

会社紹介

東京・丸の内から世界へ。まちづくりのリーダー

三菱地所は総合不動産会社です。「まちづくりを通じた社会への貢献」を基本使命に掲げており、東京・丸の内に代表されるオフィスや商業施設の開発・賃貸・運営管理をはじめ、住宅の開発・分譲、更には設計監理や不動産仲介、海外事業、エリアマネジメントなど多岐にわたる事業を展開。近年はホテル開発・運営や空港事業のほか、新事業創出やDXにも力を入れています。
1890年、まだ原野だった東京・丸の内一帯を購入し、世界有数のビジネスセンターに育て上げてきた歴史があらわすように、当社グループは「デベロッパーマインド」を大切にまちづくりを進めており、まちに住む人、働く人、訪れる人など、まちに関わるあらゆる人、さまざまな空間やサービスに求められる本質的な価値に思いを馳せ、チャレンジを続けています。また、長期経営計画における社会価値向上戦略の柱として当社グループが注力するべき4つのサステナビリティ重要テーマを定め、本年度、事業との相関性の明確化を目的に改定を実施し、「三菱地所グループと社会の持続可能性 4つの重要テーマ」としました。様々な取り組みを通じて、持続可能な真に価値ある社会の実現を目指します。

ESG/SDGs経営の取り組み方

2050年の未来を築く: 三菱地所グループのサステナブルなビジョン

三菱地所グループは、長期経営計画2030において、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」を両輪に据えた経営目標を掲げ、サステナブルな社会の実現に向け、事業活動を通じて時代が抱える社会課題の解決に取り組んでいくことを明確にしています。社会価値向上戦略の柱として、特に当社グループが注力するべき社会課題として4つのサステナビリティ重要テーマを定め、取り組みを推進してきました。
当社を取り巻く自然環境と社会環境の変化、サステナビリティに関する企業への要請の一層の複雑化の中、4つの重要テーマとマテリアリティ(重要課題)を改定し、2024年5月、長計Reviewにおいて発表。今回の改定において、これまで当社グループから社会への価値提供の軸としての機能を担っていたサステナビリティ重要テーマを「当社グループと社会、双方の持続可能性確立のためのアクション」として再定義し、当社グループのコアビジネスであるまちづくりとの親和性を高めることで、事業とサステナビリティの融合を目指します。
なお、長計Reviewでは、サステナビリティビジョン2050で定める「Be the Ecosystem Engineers」を事業においても大切にすべき基本方針として、「社会価値向上戦略」と「株主価値向上戦略」の共通基本方針としています。
詳細は、三菱地所グループ サステナビリティサイトをご参照ください。
「両輪の経営」のフレームワーク

環境課題に対する取り組み

三菱地所の環境貢献: エネルギー削減と循環型社会の実現

三菱地所グループでは、脱炭素社会の実現、当社グループが掲げる目標であるネットゼロ、RE100達成に向けて、テナント様や様々なステークホルダーとの連携のもと、省エネルギー・CO2排出削減への取り組みを進めています。Scope2の削減に向けて、保有する物件において再生可能エネルギー由来の電力の導入に努めるとともに、開発物件についても高い環境性能、エネルギー効率を目指し、ZEB・ZEH等の認証についても積極的に取得することを掲げています。また、Scope3の主な排出源である建築工事の資材については、開発・建設工事におけるサプライチェーン全体で取り組むべき分野であり、設計会社、建設会社、建材メーカー等のステークホルダーとの連携を深め、削減を進めていきます。
三菱地所グループでは、廃棄物削減目標達成に向けて、三菱地所本社でのごみの分別強化のほか、ステークホルダーであるテナントの皆様にも協力いただき、ごみ分別の強化、店舗テナント毎のごみ計量による削減・分別徹底をお願いするととともに、運用の見直しを行いながら取り進めています。また、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)での資源循環の取り組み「サーキュラーシティ丸の内」※を実施し、テナントや来街者等の皆様のご理解と協力のもと、循環型社会の実現に向けて、リサイクル率向上・廃棄物排出量の削減に努めて、環境に優しいまちづくりを進めていきます。
第1弾:食品ロス削減施策として食べ物持ち帰り「MARUNOUCHI TO GO PROJECT」
第2弾:ペットボトルのリサイクル「Bottle to Bottleリサイクルサーキュレーション」
第3弾:飲食店舗等にて使用された廃食用油を持続可能な航空燃料(SAF)やバイオディーゼル燃料へ再利用
第4弾:ゼロ・ウェイストタウン徳島県上勝町と資源循環の連携
TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)街区が位置する「常盤橋」エリアにおいて、「ゼロ・ウェイスト」政策を掲げる徳島県上勝町で展開される資源循環の取り組みと連携し、環境配慮と経済活動が両立したサステナブルなまちづくりを進めています。

社会課題に対する取り組み

人権尊重とサステナビリティ: 三菱地所のコミットメント

サステナブルな社会を実現するためには人権尊重が欠かせない重要な要素です。あらゆるステークホルダーの基本的人権を尊重する責任を果たすために、「三菱地所グループ人権方針」を制定して人権デュー・ディリジェンスを行うほか、人権・労働問題に限らず気候変動などの課題に対応すべく「三菱地所グループのサプライヤー行動規範」を2022年4月に制定しました。当社グループのサプライチェーンにおいて、相対的にサステナビリティリスクが高くなる傾向が強いと判断した「施工」「清掃」の分野を対象に、見積要項書においてサプライヤー行動規範を遵守事項として位置付け、遵守状況を確認するためヒアリングシートを用いた調査に加え、労働者との対面インタビューを実施しています。一次サプライヤー(直接の取引先)のみならず、二次以降のサプライヤー(取引先の委託先)についても調査を実施し、潜在的なリスクを特定し、調査結果から改善の取り組みを該当サプライヤーに要請しています。
また、オフィスや住宅などの建設時に使用する型枠コンクリートパネルは、南洋材が原料となっています。これらの材料調達では、先住民の土地の収奪や環境破壊等を含む違法伐採材が含まれることがNGO等から指摘されています。当社グループでは、人権および環境保護の観点から、持続可能性に配慮した調達コードにある木材(認証材並びに国産材)と同等の木材を使用し、2030年度までに使用率100%を目指しており、三菱地所においては、2020年4月以降に配布する見積要項書の中に本内容を盛り込むなどし、建設会社に本内容の遵守を求めています。
※サステナビリティリスクが高くなる傾向が強いと判断した基準
 ①外国人労働者や技能実習生等の、立場が弱くなりがちな労働者の雇用が想定されること
 ②環境への負荷が高い事業であること
 ③多重の委託構造であり、リスク把握・特定が困難である場合があること

ガバナンス課題に対する取り組み

コーポレートガバナンスの強化: 三菱地所の透明性と説明責任

三菱地所は経営の最重要課題の一つとしてコーポレートガバナンス体制の整備・ 推進を位置付けています。 2016年に指名委員会等設置会社へ移行してからは、「経営監督と業務執行それぞれの役割明確化と機能強化を図るとともに、株主をはじめとするステークホルダーに対する説明責任を果たすべく、経営の透明性及び客観性の担保に努めること」を基本的な考え方とし、社会情勢及び企業を取り巻く経営環境の変化、ステークホルダーの要請等 を踏まえ、コーポレートガバナンス体制の改善を着実に推進してきました。
2024年3月期は、ガバナンス体制の拡充を企図し、取締役会構成に関し執行兼務の取締役を1名減員(取締役数:15名→14名)し、取締役会に占める社外取締役構成比率を向上(47%→50%)させたほか、数年に一度実施することとしている取締役会の第三者評価を行い、取締役会の実効性等について検証を実施しました。
また、「長期経営計画 2030」で掲げる資本政策の一環として、資本効率及び株主価値向上を図るため、約1,000億円の自己株式取得(2023年3月期決議済み)を完了しました。更にダイバーシティの拡充を企図し、国連が策定した女性のエンパワーメント原則(WEPs)に賛同し、同原則に基づき行動するためのステートメントに署名を行いました。
詳細は当社HPをご参照ください。
三菱地所株式会社
会社概要
本社住所 東京都千代田区大手町
1-1-1 大手町パークビル
代表者名 代表執行役 執行役社長 中島 篤
創業 1937年5月7日
社員数 単体:1,093名 連結:11,045名
業界名 総合不動産業
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  • 〒100-0004 東京都千代田区大手町1丁目6-1 大手町ビル4階